高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「あ、そうそう、教授に頼まれたんだけど」

と、二階堂さんは藤崎社長に近づき、耳打ちする。

藤崎社長は一瞬こちらをちらりと横目でみて、

「ああ、順調だ。近いうちに中間報告書をまとめておくから」

と低めな声で二階堂さんに言葉を返した。

「あの、一体どういう仕事なんですか?」

「人体実験」

二階堂さんの言葉が耳のなかに冷たく入ってくる。

「冗談だよ。人工知能に関するデータ集積だよ」

「そ、そうでしたか」

わたしの顔をみて、二階堂さんは素直な子だな、とつぶやいた。

「さあ、仕事はじめましょうか。星彦もつむぎさんも」

昨日の帰宅前のあやしげな質問を投げかけたのも嘘だったかのように、晴れ晴れとした顔つきで藤崎社長は自分の席に座り、仕事の支度をはじめていた。

二階堂さんも自分の席に座り、黙々と作業をはじめている。

しばらくして、二階堂さんが藤崎社長に出向先の仕事の進歩状況について話し合いをはじめた。

話しながらも二人ともわたしのほうに顔をむけてはちらちらと視線を送ってくる。

やりづらい感満載だったけれど、待たせてはいけないと、気にしないで仕事を続けた。
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