高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「そんなに身をよじらせるなんて。僕の食事だけでは足りなかったようですね」

体の力が抜けてうまく立てず、藤崎社長の腕のなかにしっかりとしがみついていた。

藤崎社長に身を預けてしまったことを後悔したとともに、時頼さんが近くにいるのにこんなことになって恥ずかしい気持ちになった。

「……ご、ごめんなさい」

まだ体の一部の余韻が解けないせいで、声がかすれる。

息を整えていると、どかどかと廊下を歩く音が部屋に近づいてきた。

藤崎社長の腕をふりほどき、足元に落ちていたスカーフをとると首元に付け直した。

「なにしてんだよ。二人で」

時頼さんは、部屋のドア近くの照明のスイッチを押した。

まぶしい光によろめきそうになる。

「迷っていたみたいなんでね。親切に教えてあげようと思って」

「ったく、しっかりしろよ、つむぎ」

時頼さんの心配そうな声にさっきまでしていた恥ずかしいことを打ち明けられず苦しい気持ちで満たされる。

「……え、ええ。今日はありがとうございました……そろそろ帰ります」

藤崎社長と時頼さんの間を歩くも、足に力が入らない。

「足がふらついてるじゃねえか。送っていくぞ」

横切ろうとしていたところで時頼さんがさっとわたしの腕を握った。

「泊まっていきますか?」

時頼さんのフォローも無視しながら藤崎社長はマイペースだ。

「……いいです。ここで失礼します」

時頼さんの手をほどき、1階部分に降り、カバンをとると、逃げるように部屋を出た。
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