高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「兄貴がここに連れてこいってさ」

「藤崎社長が?」

ホテル密集地のなかでも目の前に広がる漆黒の海を望む外資系のホテルがあった。

駐車場に車をとめ、椰子の木が等間隔で植えられている脇の道を通り、ホテルのロビーへたどりつく。

すぐ近くには遊園地があり、閉園時間がすぎていたが観覧車やアトラクションの照明はまだ灯ったままだった。

「兄貴もひどいよな。俺をダシに使うなんてさ」

「そんなことは……」

藤崎社長が姑息な手をつかうだろうか。

確かに今日の荷物の件が思い当たるけれど、胸にひっかかるものがあった。

「ちょっと座って待ってろ」

ロビーには2、3組のチェックインを待つお客がいた。

時頼さんはフロントへ出向き、手続きを行った。

近くにあったソファに腰掛け、おそるおそるカバンのなかからスマホを取り出すと、連絡先を開いた。

さすがに藤崎社長に連絡はまずいと思い、二階堂さんにメールを出した。

受付からわたしの座るロビーのソファに近づく。

「どうした?」

「いえ、なんでも」

「そっか。じゃあいくぞ」

カードキーをもらった時頼さんの後ろに続きながら、エレベーターに乗る。

最上階の部屋に案内された。

リビング部分は広く、ソファとダイニングテーブルが置かれても余裕がある。

天井まである窓をのぞくと眼下には先ほどみた黒い海とともに煌々と灯る遊園地があった。

ベッド部分が見当たらない。奥の扉の先にあるのだろうか。

「あの、藤崎社長は?」

「待ってろよ、しばらくしたら来るってさ。迎えに」
< 95 / 122 >

この作品をシェア

pagetop