あなたに捧げる不機嫌な口付け

それまで一緒にいるということで。

恭介さんと呼ぶ度ににやけていた恭介さんの口元も、最近になってからやっと、だいぶ落ち着きを見せていた。


一度「気持ち悪い帰る」と本気で帰りかけたのが効いたらしい。


尋ねてキスをする習慣が、少しずつ、


「キスしていい?」

「好きにすれば」

「キス以上のことしてもいい?」

「訴えるよこの変態」


にいつの間にか変わったな、とこの頃思う。


……うん、なんか変態っぽいな。


別にキスが嫌なわけじゃない。


嫌いか好きかで言ったら好きだし、嫌いじゃないか好きかで言ったら嫌いじゃない。


「祐里恵」


耳元で聞こえた呼びかけに振り向く。


「ん? ……ちょっと」


あああ、変に近い時点で察すべきだった……!

手が触れた時点で警戒すべきだった!


なんで振り向いたら綺麗な顔が視界いっぱいにあるわけ!?


おかしいでしょ! おかしいよね!


「恭介さん!」

「キスして欲しそうな顔したから」


気障なのか何なのか、よく分からないことを言い訳代わりにいけしゃあしゃあと言う恭介さんを睨みつける。
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