捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

普段周りには見せない表情を、私には惜しげもなく見せてくれる。

それがとても嬉しくてたまらない。

けれど私の本意が分からないランスは、私の言葉に不思議そうな表情を浮かべていた。


「嬉しい?……なんのことだかさっぱり」

「いいのよ、あまり考えないで。それよりも、どうして私があそこにいるって分かったの?」

「ああ、それは。実はアリシアを見送ったあと、どうも嫌な予感がして仕事に手も付かず、アリシアの屋敷に向かったんだ。その途中停まっている馬車を見つけて……。近くで倒れている御者に話を聞けば何者かに連れ去られたと。それで急いで私の部下にも報告し、お前を捜しに向かった」


やはりなにがなんでもついて行くべきだったと、ランスは厳しい表情になる。

そしてそのまま話を続けた。


「なにか手掛かりになるようなものは、と馬車の周りをくまなく探したがなにもなく、どうしようかと途方に暮れていたとき、近くに待たせていたメデュールが珍しく暴れた。まるで早く乗れと言わんばかりにな。それでメデュールに乗った瞬間、私の指示も受けず一直線に駆け抜け、着いた先がアリシアがいた小屋だった」

「メデュールが……、どうして」

「まあ、馬の嗅覚はとても優れているから。かといって匂いを辿って行けるかどうかまでは分からないが。きっとメデュールの隠れた能力なんだろう。今回はメデュールに助けられた、後でご褒美をやらないとな」

「……ええ、そうね。沢山あげてちょうだい」

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