ダイヤモンドウエディング~キスからはじまる永遠の愛~《完》
___________
_______
「総理、これを黙って受け取って下さい」
俺は退職届を手渡した。
「奥様のコトは訊いているぞ。若いのに大変だな。
私の片腕は君しか居ないと思っているよ。樋口君」
「総理・・・」
「退職届ではなく、休職届として受理しておく。奥様のそばに居てあげなさい」
「ありがとうございます。総理」
俺は仕事を休職し、美桜のそばに付き添った。
互いに家族を捨てて共になった仲。美桜の家族と呼べる者は俺しか居ない。
俺は彼女を看取る覚悟だった。
25歳という若さが仇となり、癌が彼女の全身を急速に蝕んでいく。
美桜は手鏡に映る自分を見つめて大きな溜息を吐いた。髪は完全に抜け落ちて丸坊主だけど。
俺が用意したウィッグで誤魔化していた。でも、眉と睫毛は無理だった。
「変な顔。髪の毛は分かっていたけど…眉と睫毛まで抜けるなんて想定外だった・・・」
「睫毛は付け睫毛があるし、ほら眉はペンシルで描けばいい」
「こうなるんだったら、結婚式しとけばよかったね・・・」
「え、あ・・・」
俺達は入籍だけで結婚式は行っていなかった。
―――――こんな風になるんなら、ちゃんと結婚式すればよかったな。
_______
「総理、これを黙って受け取って下さい」
俺は退職届を手渡した。
「奥様のコトは訊いているぞ。若いのに大変だな。
私の片腕は君しか居ないと思っているよ。樋口君」
「総理・・・」
「退職届ではなく、休職届として受理しておく。奥様のそばに居てあげなさい」
「ありがとうございます。総理」
俺は仕事を休職し、美桜のそばに付き添った。
互いに家族を捨てて共になった仲。美桜の家族と呼べる者は俺しか居ない。
俺は彼女を看取る覚悟だった。
25歳という若さが仇となり、癌が彼女の全身を急速に蝕んでいく。
美桜は手鏡に映る自分を見つめて大きな溜息を吐いた。髪は完全に抜け落ちて丸坊主だけど。
俺が用意したウィッグで誤魔化していた。でも、眉と睫毛は無理だった。
「変な顔。髪の毛は分かっていたけど…眉と睫毛まで抜けるなんて想定外だった・・・」
「睫毛は付け睫毛があるし、ほら眉はペンシルで描けばいい」
「こうなるんだったら、結婚式しとけばよかったね・・・」
「え、あ・・・」
俺達は入籍だけで結婚式は行っていなかった。
―――――こんな風になるんなら、ちゃんと結婚式すればよかったな。