下宿屋 東風荘
戻ると棚からたくさんの菓子を出しているので、食事はもういいのかと聞くと、高校生は「最後になるんだから今日だけお願い」と手を合わせている。

「森くんの分も食器の片付けをしたら今日だけ良いとしようか」

二人が食器を洗いに行き、回りを片付けてからお菓子の袋を開けて食べている。
食べたばかりなのに良くはいるものだと関心しながら、お酒を飲んでいる大学生に牛牛蒡を勧め、堀内の研究の話で盛り上がっている。

「結局、院の修了でしょ?学位は?」

「一応、修士課程だったから修士はあるけど、博士は難しいって聞いてたから諦めたんだ。来年から四年制の博士課程ができるみたいだから、受けてみれば?」

「そのまま教授目指すとか?」

「専門決めてるの?」

「うん、今法学部なんだけど」

「え?」

思わず振り向いてしまったが、そう言えばそうだったなどと酒を注ぎ話を聞く。

「そのまま司法試験に落ちなければいいんだけど、もう一つ上も目指したくて。将来は法務省とか入れたらいいなぁって思うけど、狭き門だからせめて公務員になれたらって考えてるよ」
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