下宿屋 東風荘
しばらく様子を見ていると、参拝の振りをしながら何かを探しているような、誰かを待っているような動きをしている。

うまく隠してはいるが、こちらから見れば耳としっぽが丸見えだ。
そっと、背後に周り首根っこをつかむ。

「何をしてるんだい?ここは私の神社なんだけどねぇ?」

「離せ、我々は那智様の使いである!」

「あぁ、私が見えるようにしてもらってるのかい。生意気なところがそっくりだねぇ?那智に!」

「伝言を預かって参りました」

もう1匹の狐の方が分を弁えて居たので、仕方なく離す。
最初の1匹はまだ文句を言っているが、影程度どうとでもなる。
力の強い狐の眷属になればなるほど強いが、この四社の中では私が一番年上となり力も強い。

「して、伝言とは?」

「秋彪様の影2匹、冬の社にて応戦するも深手をおったため、我等那智の影2匹が変わりに行くこととなりました」

「私の影からは報告はなかったが……」

「悪孤の襲撃に応戦したものの、怪我はなく、報告に散ったものと、介抱に1匹。すぐに連絡は来るかと思います」

「ふぅん。分かったと那智に伝えておいておくれ。詳しい事は今宵そちらに聞きに行くから、美味しい酒を頼むよ」
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