イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
オフィスの倉庫から、凜はいそいそと発掘してきたのだ。このモザイクをかけずして直視などできそうもない、カオスな数々のアイテムを。
「ぜったいに外しちゃダメだからね? 約束して」
「え……そんな、凜……ひどい。……わかった」
「俺にも誓え。ぜってー外さねえって」
「外さない……ぜったい」
こうして、残念無念で憐憫な、薄倖少女が誕生したのである。
この約束を、碧羽は五年以上も忠実に守っている。かなりの不満はあったが、双子との約束である。約束を違えるという選択は碧羽になないのだ。
碧羽は、鏡を見てはうんざりし、それでもふたりの真剣な表情を思い出し、また一日、また一日と、鏡のひび割れそうな変装をする。
だがいつしか、この笑える……この酷い変装も板につき、彼女にとっての日常となる。
慣れとは怖ろしいものである。人の美醜さえ歪ませる。
見た目の善し悪しが気にならなくなった頃だ、碧羽の母親が鬼籍に入ったのは。
当時まだ、初等部六年にあがったばかりの碧羽は、唯一の存在である母が亡くなり、悲しみに暮れていた。
さすがに父も、このときばかりは在勤に変え、娘のそばにいた。