京都チョコレート協奏曲
「困った大学生って、まあ、態度が悪かったんなら申し訳ないけど。でも、自分は健康体だと信じてたのに、いきなり結核なんて言われたら、けっこう凹むよ?」
「21世紀の現代、結核は不治の病と違います。あなたみたいに比較的初期のうちに治療を始めて、お医者さんの指示どおりまじめに薬を飲み続ければ、半年で完治や。再発もしぃひん。説明されたでしょ?」
同じことは、2度も3度も説明された。
でも、ピンと来ない。
入院なんか初めてだし、結核って響きが不気味だ。
それに、おれに病気を感染させた人は、もうこの世にいない。
肺炎らしき症状で入院したら実は結核だったと、死後にわかったそうだ。
おれの感染経路は、2回生のころに行った古文書演習のフィールドワークだ。
古文書をしこたま貯め込んだ蔵がある古い寺で、年老いた住職さんがひどく咳き込んでいた。
たまたま風邪気味だったおれは抵抗力が弱っていて、結核菌をもらってしまった。