京都チョコレート協奏曲
「センセの高校時代は違ったやろうけど、最近は男子もバレンタインに逆チョコとか友チョコとか、くれはるで」
「チョコは持ってきてないな。何か甘いもの、ほしかった?」
「甘いもんとか、別に。ただ単に……ホワイトデーまで1ヶ月も待たなあかんって、不安やねん。気持ち、どれだけ込めても、1ヶ月も経ったら忘れられてしまうんと違うかなって」
たったの1ヶ月、ではないんだ。
高校時代は、おれもそうだったかもしれない。
今すぐ結果がほしくて、先延ばしにされる不安には耐え切れなかった。
20歳を超えて、おれは悠長になったわけでも大人になったわけでもなくて、時間をテキトーに使い捨てるようになってるんじゃないかなって、急に気付いた。
今という瞬間に押し潰されそうな、花乃ちゃんの張り詰めた表情がとてもキレイで。
魔が差した、かもしれない。
からかいたいというより、奪いたいと思った。
「じゃあ、即席で悪いけど、逆チョコの代わりに」