京都チョコレート協奏曲


「センセの高校時代は違ったやろうけど、最近は男子もバレンタインに逆チョコとか友チョコとか、くれはるで」



「チョコは持ってきてないな。何か甘いもの、ほしかった?」



「甘いもんとか、別に。ただ単に……ホワイトデーまで1ヶ月も待たなあかんって、不安やねん。気持ち、どれだけ込めても、1ヶ月も経ったら忘れられてしまうんと違うかなって」



たったの1ヶ月、ではないんだ。


高校時代は、おれもそうだったかもしれない。


今すぐ結果がほしくて、先延ばしにされる不安には耐え切れなかった。



20歳を超えて、おれは悠長になったわけでも大人になったわけでもなくて、時間をテキトーに使い捨てるようになってるんじゃないかなって、急に気付いた。


今という瞬間に押し潰されそうな、花乃ちゃんの張り詰めた表情がとてもキレイで。



魔が差した、かもしれない。


からかいたいというより、奪いたいと思った。



「じゃあ、即席で悪いけど、逆チョコの代わりに」


< 22 / 40 >

この作品をシェア

pagetop