京都チョコレート協奏曲


連絡してみようかとスマホを取り出したら、平ちゃんが大きな目をキラキラさせて、おれにストップを掛けた。



「ユーラシア史研究室の場所、総っちは知ってるんだろ? 押し掛けてみようぜ。俺、時尾ちゃんって子、見たことないし」



「あれ、そうだったっけ? すごいキレイな子だよ。清楚で素直で」



おれと平ちゃんは道場のそばの駐輪場に自転車を置いたまま、キャンパスへ向かった。


研究棟はあちこち明かりが点いている。


博士課程《ドクター》や博士研究員《ポスドク》の中には、完全に夜行性の人も少なからずいるんだ。



今さらだけど、と平ちゃんが訊いてきた。



「ユーラシア史って何だ? シルクロード的なやつ?」



「シルクロードは唐代だろ。いちくんとこの研究は、もっと後の時代。中国の王朝は、基本的に外国と交易しないんだけど、例外が唐とモンゴル帝国で、チンギス・カンが13世紀に建てたモンゴルのころは、唐代以上にユーラシア全土の陸海の交易が発展したらしい」


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