京都チョコレート協奏曲
時尾ちゃんが笑った。
「もう1つ許してもらいてぇことがあって。今度の試合、見に行っても、さすけねぇですか? わたし、昔から薙刀《なぎなた》をやってて、弟が剣道だから、武道の試合が好きなんです」
「さすけねぇ。薙刀は、今でもサークルでやってるんだろう? 1度、異種試合で手合わせ願いたい」
「は、はい」
時尾ちゃんが笑いながら、口元を手で覆った。
頬がハッキリと赤くなっている。
いちくんも少し笑ってるような気配がある。
珍しい。
てか、すごくいい雰囲気だ。
このままさらに甘いムードに突入するんじゃない?
けっこう期待できるかも。
と、思ったんだけど。
突然、いちくんが振り向いた。
笑顔じゃない。
いつものクールなポーカーフェイスでもない。
怒ってるような、うろたえてるような、何とも言えない微妙な顔だ。
「総司、平助《へいすけ》……いつからそこにいた?」