京都チョコレート協奏曲
おれは肩をすくめた。
「さあ、いつからでしょう? いちくんが背後を取られて気付かないって、滅多にないよね。余裕なすぎるんじゃない?」
「ぬ、盗み聞きとか、悪趣味だ」
「道場の消灯時間になっても戻ってこないから、心配になって様子を見に来たんだよ。腹減ってるだろうなーって、飯に誘おうと思ったら、何かリア充してるし」
「違う、そんなんじゃ、別に……オレなんかとじゃ、こいつも、迷惑だろうし」
時尾ちゃんが慌てて口を挟んだ。
「斎藤先輩、迷惑って、むしろわたしのほうが先輩に迷惑かけっつまって、こっだ遅い時間まで手伝わせて、ごめんなさい、許してくなんしょ」
「い、いや、元凶は勝先生だ。謝るな」
おれは思わずツッコミを入れた。
「違うよ。元凶はいちくんだよ」
「オレ? どうして?」
「バレンタインだからって、普段よりさらに警戒レベル上げて鉄壁ガードするもんだから、時尾ちゃんも気が引けてチョコを渡せなかったんだろ? 勝教授はそれを知って、いちくんを呼び戻したんだと思うよ」