騎士団長殿下の愛した花
「ねえ、フェリチタ。僕に何かくれないかな、餞別みたいな感じで。何でもいいんだ、フェリチタの物なら」
「餞別……本当に……何でもいいの?」
「うん」
(私も……最後に卑怯なこと、してもいい、のかな)
心の声は彼には聞こえていないから。
フェリチタは目をつぶりながら懐に忍ばせていた瓶を彼に押し付けた。
「これは?確かに見た目は綺麗だけど」
見覚えのない物に訝しげに瓶を光に翳すレイオウルに、フェリチタは抑え切れず震える声で告げる。
「もし、戦場で……私を連れて行かなかったことを後悔したら、これを飲んで」
「……まあ、何でもいいよ。僕がそんなこと思うはずないからね。でもありがとう」
態とらしく冷たい言葉を吐いて、ふっと薄く笑うけれど。
(きみはきっと飲んでしまう。私にはわかるよ)
本当は寂しがり屋で怖がりの王子様。
(私を置いていったことを後悔して……もっともっと後悔すればいい──)
どんな気持ちで、行かないで欲しいと言ったか。
どれほどの覚悟で、連れて行って欲しいと懇願したか。
(思い出せば、きっと解ってくれるでしょ?)
最後になんて残酷な事をしようとしているんだろうとは思うけれど。
でも、自分勝手で卑怯な自分は、彼に真実を知らないままでいて欲しくない。いさせられない。自分と同じような絶望を味わうかもしれないとわかっていて、それでも。