騎士団長殿下の愛した花
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体調が悪いから誰も来るなと部屋に篭って──翌日。
昨日は来なかったが、さすがに我慢しきれなくなったのだろう、お昼頃ルウリエが強引に部屋に押し入ってきた。
「フェリチタ様っ。本当にお止めにならなくてよろしいのですか!」
と、思ったのだが、どうやら違うらしい。
「止める?何を?」
訝しそうなフェリチタの声にルウリエが間抜け顔をした。
「…………ご存知ないのですか?」
「だから、なに、を?」
ああ~っとルウリエが頭を抱えた。フェリチタ様が一向に出てこられないのでなんとなくそんな気はしていました、と呻く。
「本日正午より、決闘が行われます。シャノット伯爵……いえ、現在は子爵でございました。子爵家嫡男、マルクス=シャノット様がレイオウル様に決闘を申し込まれ、レイオウル様が承諾されましたので」
「は、決闘……!?」
「詳しい話は向かいながらお話致します。とりあえず、外に出られるものにお着替えください!」
寝耳に水。状況に追いつけないまま慌ただしく身支度し、ルウリエに連れられ部屋を飛び出す。息を荒らげながら、呼吸の合間に声を発する。
「ルウ、さっきシャノット“子爵”って言ってたよね。それが何か関係ある?」
「その通りでございます。フェリチタ様に無礼を働いたシャノット伯爵家を失墜させるために、レイオウル様は横領などの証拠を集めました。貴族自体が清廉潔白とは言い難い存在ですが、その中でも元よりシャノット家は抜きん出て不正が多いと言われておりましたので、国王陛下にとっても良い機会だったのです。そのためレイオウル様が提出した資料を元に、陛下が爵位の降格を命じたのです」
フェリチタは呆然と視線をさ迷わせた。
「……じゃあ決闘を申し込んだのは、殿下を恨んで……?」
(なら、それは……私の、せいだ)