無理すんなよ。
「どうしたの?」
相変わらずの着崩した制服に、少しチャラそうな格好。でも、本当の桜庭くんはまっすぐで自分を曲げない人だ。
「俺にも弁当作ってくれよ」
その言葉に、思わず「……へ?」と間抜けな声が出てしまった。
わ、私が桜庭くんに、お弁当を……?
「そ、そんなっ、人に渡せるほど上手じゃないし、それに……」
「もっと自信もてよ、琴葉」
遥は姉兄だから自分のお弁当と一緒に作ってるだけで、麻莉奈が作ってくれるならそれでいいと思ってたし。
最近は忙しくてあまり時間がないから、凝った料理も作れてない。
そんな物を、桜庭くんに渡すなんて失礼にも程があるよ。それを食べたいだなんて、やっぱり桜庭くんも変わり者だ。