無理すんなよ。
「心配しなくても、琴葉はそのままで十分だろ。俺は、琴葉の作った弁当が食べたいんだ」
────ドキン。
ねぇ、どうして桜庭くんは私にそんな言葉をかけてくれるの?
まだ出会って間もないのに、こんな風に私を認めてくれる。私という存在を肯定してくれる。
みんなの輪に加われて初めて知った、このあたたかい感情。今までは感じたことのなかった安心感。
遥はいつも、こんな日だまりのような場所の中心にいたんだね。
みんなは優しいから私をこの場に加えてくれる。でも、時間が経つにつれてまた私は元の世界に戻るんだ。
誰も入ってこられないような、暗くて深い闇の奥。ひっそりと息を潜めて、またひとりの夜を繰り返す。
そんな、当たり前だった日々に。