きゅんらぶ・あそーと
*** another side

『ねぇねぇ、峰先生。今日の”俺のモノ”ってどういう意味?』

『そのままの意味だ、分かるだろ』

『えー、子供だから分かりませんー』

昨夜の電話での喧嘩の事、根に持ってやがる…。

『教えてくださいよ、せんせ?』

電話口の向こうでニヤけている顔が浮かぶ。


確かに、担任として接する事も出来なかった俺も大人げなかったけど。

だからって、担任の目の前で、わざわざ副担任に日誌渡すヤツがあるか?

”先生に渡したい気分なので”
”可愛い事言ってくれるなぁ”

思い出しても腹が立つ。


コイツが可愛いなんて俺が一番分かってる。

でなきゃ、教師生命賭けた危ない橋を渡ってまで生徒と恋愛なんてするかよ…。

”すみません、これ俺のなんで”

そう思ったら居ても立ってもいられなくなって、つい…。


『ねぇ、峰先生ってばー』

呑気でいいな。

『あのね、私、ずっと寂しかったんです』

『何がだ?』

『私が学校で先生に話しかける時、”先生は私の恋人なんだよー”って、他の皆に心の中で自慢したくて。だから、控えてるつもりだったけど、あまり話しかけるなって言われて…』

そうだよな、コイツはちゃんと我慢してるんだよな。

『だから、今日は嬉しかったんです。先生が”俺のモノ”って、他の人の前で言ってくれた事が』

『それは日誌が…』

『ふふ、分かってますよ』

あぁもう、コイツの方が大人だな…

『嘘だよ、俺も同じ。皆の前で”お前は俺のモノだ”って、ずっと言いたかったから』

*** fin
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