エリート外科医の一途な求愛
『お先に失礼します』と言って医局を出て、大学を出る前に私は女子トイレに向かった。


待ち合わせには十分間に合う。
バーに行く前に、メイクを直すつもりだった。


一日の仕事を終えて、それなりに疲れたからか、さすがにちょっとメイクが落ちている。
バッグから化粧ポーチを取り出しながら、私は鏡の中の自分をジッと見つめた。


昼間、美奈ちゃんには、『なんて言われてるかわからないんですか』と言われたけれど。
自分が周りにどう見られるかくらい、もちろん自覚している。
私、一般的には『美人』と言われる顔立ちだ。


二重目蓋の大きな丸い目に、形のいい鼻。
ちょっと下唇の方が厚いぽってりした口元。
それぞれのパーツが割としっかりしていて、バランスもいい。


それほどしっかりメイクをしなくても、元々はっきりした顔立ちだから、それなりに映える。
鏡に映る自分をそう自己評価しながら、私はそれほど直すこともなく化粧ポーチをバッグに戻した。


背中半分まであるほどよく栗色の柔らかい髪は、いつも仕事中はハーフアップにしている。
この後は下ろして行こうかと思ったけれど、思い直してヘアクリップから手を引っ込めた。


とりあえず、それほど手を加えなくても、これで十分。
自分でそう納得してから、私はずんぐりむっくりの彼との初デートに向かった。


ところが……。
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