エリート外科医の一途な求愛
「……葉月のって、ただの可愛いヤキモチだって思ってたんだけど」

「え? や、ヤキモチ!?」


決め付けるような言葉にドキッとしながら、私はひっくり返ったような声を上げた。
だけど、各務先生はよほどテンパってるのか、前髪を乱暴に掻き上げてグシャグシャと掻き回した。


「だからほっとこうと思ってたんだけどね……自分で味わってみると、想像以上に嫌だ」


各務先生はやっぱり早口でそう言い切ると、またしても深く重い溜め息をついた。


「あ、あのっ!」


ちょっとは私の話も聞いてくれ!と口を挟むつもりだったのに。
前髪を握り締める手の向こうから、探るように上目遣いの視線を向けられ、私の胸は大きく鼓動のリズムを狂わせた。
おかげでそれ以上の反論が何も出来ないまま。


「俺、すっげえ醜い嫉妬してる。だから、今後は気をつける。マジで。だから君も、木山先生に愛想良くするな」


『してない!』と返し掛けた反論は、声にならないままだった。
強く肩を引き寄せられ、私は各務先生の胸にすっぽりと顔を埋めてしまっていた。


「葉月……」


耳元で囁きかける声が、ちょっと掠れている。
私の髪をサラサラと優しく梳く細く長い指。
頭を撫でる大きな手。
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