エリート外科医の一途な求愛
ギラギラした太陽が南の空の真ん中に昇り、その殺人的な陽射しをさんさんと地上に降り注いでいる。
そんな炎天下の中、私はただひたすら病院へ急いだ。


もうすぐ梅雨明けだなあ、とか、呑気な気分に浸ってる余裕はない。
病院が見えてくると、私は息を切らしながら足を止めた。


病院の正面玄関は、大学の正門前以上に、カメラを構えた報道陣の姿で埋め尽くされている。
各務先生と教授の緊急オペが関係していそうで、いったいなんだろう?と落ち着かない。


出勤早々汗だくになって、私は真っすぐ病院のオペ室に向かった。
途中見学ルームに入る手続きをしながら、これから対応するアメリカの博士の顔を思い浮かべた。


各務先生の元同僚。
先生は『レイ』って呼んでいた。
年齢不詳のアメリカ人。外国人。


そこまで思い浮かべてハッと気づく。
私……。英語喋れないけど、私で大丈夫なんだろうか?


――と言う不安は、見学ルームに入ってすぐ払拭された。
大きなガラス窓に張り付くようにオペ室を見下ろしていたブラウン博士は、私に気づいてすぐ、『ハヅキ!』と呼び掛けてくれた。


ウチの医局の講師や助教の姿もたくさん見られる。
そんな人たちを掻き分けて博士の前に立ち、ちょっと怯みながら『ハロー』と挨拶をすると、彼の隣にいたブロンド美人がニッコリ笑いながら、私に流暢な日本語で話し掛けてくれたのだ。
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