エリート外科医の一途な求愛
木山先生を追いかけるように立ち上がったタイミングで、教授室のドアが開いて中から各務先生が出てきた。
「あっ……」
私の目は反射的にそっちに向く。
各務先生は、自分のデスクではなく私の近くにいる木山先生に、一瞬確かに不快そうに眉を寄せた。
けれど、それ以上は何も表情に表さず、黙ったまま医局を横切っていく。
とても話し掛けられる雰囲気じゃなくて、私は木山先生と同じようにその背を目で追うだけだった。
各務先生が医局から出て行くと、木山先生は『やれやれ』と言うように、ひょいっと肩を竦める。
「あの様子じゃ、また平行線だったみたいだな。ったく……。将来有望なエリート心臓外科医が、たかだか女で未来を棒に振るとは、大馬鹿だ」
小馬鹿にしたようなことを口先で呟く木山先生には踵を返し、私は教授室のドアに駆け寄った。
そして、一度ゴクッと唾を飲んでから、大きくゆっくり二度ドアをノックする。
『どうぞ』と返事が返ってくるのを聞いてから、意を決して中に入った。
「あっ……」
私の目は反射的にそっちに向く。
各務先生は、自分のデスクではなく私の近くにいる木山先生に、一瞬確かに不快そうに眉を寄せた。
けれど、それ以上は何も表情に表さず、黙ったまま医局を横切っていく。
とても話し掛けられる雰囲気じゃなくて、私は木山先生と同じようにその背を目で追うだけだった。
各務先生が医局から出て行くと、木山先生は『やれやれ』と言うように、ひょいっと肩を竦める。
「あの様子じゃ、また平行線だったみたいだな。ったく……。将来有望なエリート心臓外科医が、たかだか女で未来を棒に振るとは、大馬鹿だ」
小馬鹿にしたようなことを口先で呟く木山先生には踵を返し、私は教授室のドアに駆け寄った。
そして、一度ゴクッと唾を飲んでから、大きくゆっくり二度ドアをノックする。
『どうぞ』と返事が返ってくるのを聞いてから、意を決して中に入った。