エリート外科医の一途な求愛
溜め息混じりにそうお願いすると、クワッと目を剥いた般若のお面が、真っすぐ私に向けられる。
それに更にビクッと怯むと、そのお面の後ろで先生が小さく笑ったのがわかった。


「いいけど、君、先に立ってくれないか。いくらなんでも狭すぎるし。その石頭でまた頭突きされても痛いんでね」

「う」


地味~な嫌味を感じながらも、私は大人しく先に立ち上がる。
それを見て、各務先生は議事録を全部手元に揃えてから、ゆっくり私の後に続いた。


拾った議事録を私の手に返してくれてから、顎から持ち上げるように般若のお面を取る。
その下に現れた、いつもと変わらないイケメンの各務先生を見て、意味不明だけどホッと胸を撫で下ろした。


「すみません。ありがとうございました」


一応先に、額で頭突きしてしまった謝罪と、議事録を拾ってくれたお礼を口にする。
各務先生は、私より頭一つ分高い位置から、『ん』と短い返事を返してきた。
それを聞いて、胡散臭いと思う気持ちを前面に出して、私は彼を見上げる。


「でも、なんですか、そのお面。やけに精巧で怖いんですけど」


と言うより、なんで各務先生が、病院内でこんなお面をつけて遊んでいるのかがわからない。
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