エリート外科医の一途な求愛
「あの男も言ってただろ。『身の程をわきまえろ』って」

「……?」


各務先生は、チラッと私に横目を向ける。
その視界の端っこに映り込んでるのを意識しながら、私は黙って首を傾げた。


「言い換えれば、身の丈に合った人間を選べってことだ。あの男の口ぶりだと、そうとう容姿にコンプレックス持ってるみたいだった。君が相手じゃ可哀想だ。あれで良かったんだよ」

「……え?」


各務先生が私に何を言いたいのかわからず、私は戸惑いながら聞き返した。
そんな私に、彼は呆れたような溜め息をつく。


「『美女と野獣』と言えばメルヘンだが、おとぎ話じゃなく現実の野獣は劣等感が募って苦痛なだけ。昨夜あのバーのカウンターに並んで座って、一杯でも一緒に飲んでたら、あの男は店内の客の晒し者になるだけだった。君が味わったのより、もっと惨めだよ」

「なっ……」

「誰が見ても『不釣り合い』。そういうこと。男のプライド、わかってやれよ」


言い返そうとして、私は思わず絶句した。
キュッと唇を閉じて各務先生を睨み付けると、彼も首を傾げて斜めの視線を私に向けてくる。


「君は美人だから、あの男の立場で考えるなんてできないだろう? 見た目のバランスを崩す側の屈辱も、察してやれってことだよ」


ふん、と鼻で笑われる感覚に、本気でカチンときた。
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