エリート外科医の一途な求愛
「そ、そんなの!」


私はムキになって、頬を膨らませながら各務先生に言い返した。


「各務先生に言われたくないです。放っておいても女が寄ってくるイケメンに、昨夜の彼の気持ちなんか説明されても、空々しいだけじゃないですか!」

「……はあ?」


多分、私の反論は、そうとう脈絡がなかったんだろう。
般若のお面を頭にのせたまま、各務先生は訝し気に眉を寄せた。


「だ、だいたい! そんなお面で顔隠すとか。それこそイケメンの悪ふざけにしか見えません。しかも面白がるなんて、性質悪いです!」


悔し紛れに、お面をビシッと指さしながら言うと、各務先生は多分無意識でお面に手をやった。


「怒らせたなら謝るが、放っておいても女が寄ってくるってのは、君の勝手な思い込みだろう? 俺が一体何をしたって……」

「イケメンなんてみんな一緒! 顔がいいからって、何しても許されるって勘違いしてる。思い上がってんじゃないわよ!」


興奮して頬を赤く染め、言い切った途端、大きく肩で息をすると、


「おい、ちょっと待て」


各務先生がそう言って、私の肩を掴んだ。
反射的に顔を上げた私を、彼はわざわざ背を屈めながら覗き込んでくる。
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