エリート外科医の一途な求愛
大学の附属病院で臨床医としても働きながら、医局では准教授だったり講師だったり助教だったり。
『心臓外科』という専門分野の研究に就き、大学でも学生相手に数コマの講義を持つ。


私の仕事は、彼らのスケジュール管理や、研究論文作成の補佐。
学会に同行して地方出張したりもする。


元々医療に明るいわけじゃないし、最初は慣れなくて戸惑ったけど、心臓外科の最先端医療に携わっているという自覚はある。
今はこの仕事を楽しいと思うし、やりがいも感じている。


『同僚』が食事しながら談笑するのを見て、その中の一人に意識が向いた。


ウチの医局の中でもエリート中のエリート医師。
若干三十三歳にして准教授のポストに就く、各務颯斗(かがみはやと)。
医局のトップである教授以上に忙しくて、スケジュール管理が大変なドクター。
医療秘書の私からしたら、泣きたくなるくらい厄介な先生だ。


千佳さんはウチの医局を『悪くない』と言うけれど、それは主に彼に対しての評価だと思う。


入局は中途だけど、海外留学帰りで心臓外科医としての腕は一流。
それに甘んじず、新しい臨床論文を発表するといつも高い評価を受けていて、マスコミでも取り上げられるくらいの有名人。


それは彼の能力だけじゃなく、そのルックスのせいでもある。
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