エリート外科医の一途な求愛
サラッとしたちょっと茶色い癖のない髪。
スッと通った鼻筋に、薄めの唇。
その口元の小さな黒子が、彼の色気を際立たせていて、女子学生や女性患者を虜にする。
そして何より、強い意志のこもった切れ長の目。
その目力は半端なくて、普段の彼を知らなくても、マスコミ経由のファンが多い。


文句の付けどころのないイケメンだ。
天は二物を与えない……なんて言うけれど、それなら彼は神の申し子か、とも思うくらい整った顔立ちに、引き締まった恵まれたスタイル。
今やほとんど医療界のアイドルドクターと言っていい。


そんな人と職場で日常的に接しているというのに、みんなにはかなり不評な、合コンで出会ったずんぐりむっくりの彼と、実は今夜約束している私。
待ち合わせは、大学近くのごく普通のバーだ。


時間は十九時。
普通に仕事をこなせば、余裕で間に合う時間……。


「あっ!!」


そこまで思考を働かせてから、私はハッとして声を上げた。
突然の私の大きな声に、みんながギョッとしたように食事を進める手を止めている。


「わ、私! 各務先生に、論文資料の文献探し頼まれてたんだ。すみません! 先に戻りますね!」


そう言いながら立ち上がり、三分の一ほど残ったスパゲティのお皿がのったトレーを両手に持つ。
『お疲れ~』という声を背にしながら、私は急いで学食を後にした。
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