エリート外科医の一途な求愛
国内最高とも言われる蔵書数を誇る大学図書館に籠って文献や学会資料を漁り、新しい資料はネットで検索してプリントアウトした。
自分でも完璧！と言いたくなるほどの資料を集めたのに、依頼主の各務先生は午後一から附属病院でオペをしていて、医局に戻ってきたのは私の定時を過ぎた午後六時過ぎだった。


私は既に軽く帰り支度を始めながら、戻ってきた先生に呼びかけた。
青いＶネックのユニフォームの上から白衣を羽織った各務先生が、私の声に『ん？』と足を止めて振り返る。


「オペ、お疲れ様です。お戻りになったところですみません。これ、頼まれていた文献です」


そう言いながらデスクから立ち上がり、彼の前に差し出した。
私の手元に、ちょっと気だるげな視線が落ちるのを感じる。


「ああ、サンキュ」


短い謝辞を呟きながら、各務先生が私の手元から文献を受け取ってくれた。
その場で資料を捲って確認する彼を、私はそっと上目遣いで窺う。


「あの。何か足りない資料があったら、言ってください」


絶対の自信はあるけれど、一応そう付け加えてみる。
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