エリート外科医の一途な求愛
「ただ神々しいだけの神様なら、高齢者が我先にと、手を取ったりしないでしょう。普段からああやって、患者は気さくに声を掛けてもらってるんですよ。手が届きそうで届かない。でもお話しできるかも……なあんて、ちょっとしたファン心理だと思いませんか」
「えっと……でもそれって、ドクターとして立派なことですよね?」
曖昧に笑いながらそう言うと、高瀬さんは『もちろん』と胸を張った。その時。
「患者という名のファンへのサービスだと言えば、まあ立派かもしれないけど。各務先生のあれは、女心を惑わす過剰サービスだよ。そう思わない? 仁科さん」
クスクス笑う声と同時に、後ろからそう声を掛けられた。
名前を呼ばれた私だけじゃなく高瀬さんも、ちょっと前に出ていたカメラマンも振り返る。
「医者が神様だっていうのは、一昔前の傲慢な考え方。今の時代、専門職だってサービス業だと思った方が安全だ。なんせ、言葉の掛け方一つで訴訟に発展する時代だからね。そういうところをわかってるから、抜かりない。卑怯だね」
そう言う口元を片手で軽く隠しながら、私の前で足を止めたのは木山先生だった。
私は反射的に軽く会釈をする。
「撮影同行、お疲れ様。各務先生が入局してから、仁科さんのマスコミ対応も大変になったね」
そこはかとない嫌味が感じられる言葉に、私は黙ったままぎこちなく笑った。
「えっと……でもそれって、ドクターとして立派なことですよね?」
曖昧に笑いながらそう言うと、高瀬さんは『もちろん』と胸を張った。その時。
「患者という名のファンへのサービスだと言えば、まあ立派かもしれないけど。各務先生のあれは、女心を惑わす過剰サービスだよ。そう思わない? 仁科さん」
クスクス笑う声と同時に、後ろからそう声を掛けられた。
名前を呼ばれた私だけじゃなく高瀬さんも、ちょっと前に出ていたカメラマンも振り返る。
「医者が神様だっていうのは、一昔前の傲慢な考え方。今の時代、専門職だってサービス業だと思った方が安全だ。なんせ、言葉の掛け方一つで訴訟に発展する時代だからね。そういうところをわかってるから、抜かりない。卑怯だね」
そう言う口元を片手で軽く隠しながら、私の前で足を止めたのは木山先生だった。
私は反射的に軽く会釈をする。
「撮影同行、お疲れ様。各務先生が入局してから、仁科さんのマスコミ対応も大変になったね」
そこはかとない嫌味が感じられる言葉に、私は黙ったままぎこちなく笑った。