エリート外科医の一途な求愛
チラッと横目を向けて言われたその言葉に、ジワ~ッと嫌悪感を感じた。
さすがに高瀬さんも戸惑ったのか、ポリッとこめかみを指で掻いている。


「はあ。そうですか。でも、それは媚びると言うよりは、各務先生の偉ぶらない気さくさの表れかと……。一概に『ナンパ』だと言うのも、どうかと思いますが」

「さっきも言ったでしょう。彼の場合はルックスを武器にした過剰サービスなんですよ。性質の悪い医者……
いや、『男』だ」

「木山先生、言い過ぎです」


止めなきゃ、このまま木山先生がヒートアップするだけだと感じた。


彼より年下、中途入局の各務先生が上司だということが、面白くないのが見え見えの言動。
実力社会の医療界では決して珍しくないことだけど、木山先生がウチの医局員全員を代表して言っているように取られたら、みんなが各務先生の敵のように思われてしまう。
だから私は、医局の秘書として口を挟んだ。


けれど木山先生は、私が各務先生をかばったとでも思ったんだろう。
明らかに不愉快そうに顔を歪めて、ふん、と鼻を鳴らした。


「君は他の女性のように、各務先生に軽く流されたりしない、しっかりした女性だと思っていたんだけど。買い被り過ぎたかな」
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