暗黒王子と危ない夜

「2階にも何もないよ。三成から貰った漫画くらい」

「男がわんさかいる場所よりマシだろ」

「そうかな。じゃあ……こっち」


本多くんが「おいで」と合図をしてくる。
立ち上がると、ひとりの男の子と目があった。


見ると、それはさっき三成くんにみかんジュースを手渡していた人で。

あたしから本多くんに視線を移して、


「七瀬君、あの」

と遠慮気味に声をかける。



「なに?」

「そういえば昨日、頼んでた旗が届いたんです」

「へえ。 見てみたいかも」

「っはい! すぐ持ってきます……!」


意気揚々とした表情を浮かべ、角の方に走っていく。
そして1分と経たず戻ってきて、綺麗に畳まれた布のようなものを本多くんに差し出した。

それは青かった。静かな海みたいだと思った。深いけれど鮮明で、どこまでも広がっていくような青。



「……綺麗に染まってる」

「言われてた通り、街の藍染め屋に頼んで仕上げてもらいました」

「ありがとう。奥の壁に飾ろうか」

「……はい!」
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