コンパスと鍵と真紀子さん
扉はもう開けてしまった。
私は引き止められた形で、白ちゃんの方を向いて、でも、困った風に笑い返すしか出来なかった。
「植野は今井と仲良かったんだったっけな。」
「…分かんないです。お友達、ってのは確かですけどね。」
「今井が、言っていたんだ。
次の面談の子に聞かれたら、想いが少し動いちゃいそうだ、って。」
「先生、そんなこと、ばらしちゃって良いんですか。」
「独り言だが何か?」
ありがちでベタな白ちゃんの言い訳に、切ない気持ちが溢れてきた。
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