スターチス

恋の障害


「…ちょっと」
「なんだ?」
「なんでミッキーがいるの」
「門限だから」

只今の時刻、22時。
うちの玄関の前。

掛け合いをしているのはあたしのお兄ちゃんであるミキ兄と彼氏のゆーくん。
あたしはゆーくんの車から降りてミキ兄の隣に並んで、この行方を見守るのが務め。

「ちずも!なんで黙ってミッキーの隣に並ぶの!」
「・・・門限だから?」

あたしの答えに長い溜息を吐きながら頭を抱えるゆーくん。
それもそのはず、ゆーくんは今、あたしに初めてできた“門限”に頭を悩ましている。

この前、めでたく恋人になれたあたし達。
ミキ兄も家族も公認の何の問題のないお付き合いのはずだったけど、“付き合うにおいて”という条件をミキ兄が出した。
それが“門限”ということ。

デートの時もそれ以外でも門限は22時。
それが守れなかったら別れろという条件を出した。
ゆーくんは何も考えず「それなら大丈夫!」って言っちゃったけど、なんだかんだで互いに忙しくて会うのが遅くなったりすると2時間しか会えなかったりで、ゆっくりする時間がない。

ゆーくんが家に来てくれたらゆっくり出来るけど、ミキ兄がいるから2人きりにはなれないし、門限があるから外には遅くまでいれない。
時間までに帰ってきてもこうしてミキ兄が外で帰りを待ってる。

それにストレスが溜まってきているらしいゆーくんもそろそろ限界まできてる。
あたしはミキ兄が心配してくれてることをわかってるから反抗したりはしない。

ただやっぱり2人でいる時間が短いと思うし、ミキ兄が思ってる以上に健全なお付き合いをしてるから、そこまで心配する必要ないと思ってる。

ゆーくんが怒ってるのはミキ兄があたし達に異常なほど干渉することと、あたしがミキ兄の方についちゃうこと。
でもこれも最初は黙って見てるだけだった。
ミキ兄が玄関の前で立ってるのも最初はなかった。

本当にゆーくんの自業自得で、ある日ゆーくんがミキ兄がたまたま帰ってきたタイミングを狙って車内であたしにキスをした。
しかもあたしはミキ兄に背中を向けていたし、目を合わせたのはゆーくんとミキ兄。
その後のことはご想像の通り。

あたしからすれば、ゆーくんが調子に乗ってあんなことしたからミキ兄の警戒を強くしてしまったんだけど、ゆーくんだってこんなことになるなんて思いもしなかっただろう。

ミキ兄はあたしのゆーくんへの恋に協力的だったけど、付き合うとなるとまた別だってずっと言ってた。

ゆーくんを好きな気持ちは大切にしてくれていたけど、それはゆーくんからの気持ちがなかったからで、実際付き合い始めるとかなり強い警戒心を抱くようになった。
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