陽だまりの林檎姫
「わ、私、薬学書なんて読めませんよ?」

「そうなのか?」

「いや、読めなくはないですけど。理解できないと言いますか。」

「貴族ってのは学問を究めているものじゃないのか?」

「えー…?偏見ですよ。ある程度の広さを学びますが深めるかどうかは人によります。」

酸っぱい顔をした栢木は分が悪そうに肩も語尾も竦めていく。

確かに学者になる人も少なくはないが、父親の様に商売に行く人も多いのだ。

あとは知ったかぶりも意外に多い。

「お前は?」

素直な疑問をぶつけてくる北都に申し訳なく感じてしまう。

「私は…物語が好きでした。なので様々な国の本は読みましたが、学問となると…少し興味を持った光くらいで。」

「光?」

「はい。」

そう答えるなり栢木は首元のボタンを外すと服の中に手を入れてペンダントを取り出した。

空を見上げて状態を確認するが、どんな幸運か雲がくれて微かに太陽光が差してくれる。

「こういうのです。」

栢木は水晶の様になっているペンダントに光を受けると角度を変えて光を床や壁に反射させた。

「プリズムっていうんですけど、光学部品とか光学に集中した時期はありましたね。」

「…驚いた。」

「意外でしたか?」

「ああ、まあ。…でも。」

言葉を濁したかと思うと北都は考え込むように口元に手を当てて黙り込む。

そして栢木の持つペンダントと床に映された光の影を見て目を凝らした。

光る部分に手を当ててその感覚を確かめる。

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