イジワル上司に甘く捕獲されました
ああ……私って可愛くないうえに嘘が下手だ。

自分からお弁当の話題をふったのだから気にしていたことはバレバレなのに。

相変わらずニヤニヤしながら瀬尾さんは私の顔を覗きこむ。

……仕事終わりでも完璧に綺麗な顔で、化粧も崩れている私をあまり見ないでほしい……。

「……へぇ、美羽、気にしてくれてたんだ?
俺が誰かからの手作り弁当食ってるって?」

畳み掛けるように言う瀬尾さんに。

私は降参で。

素直にコクンと頷いて、再び瀬尾さんの胸にトンッと額をつける。

「……気にしました。
……好きな人がいるのかなって。
……彼女ができたのかなって。
その人に作ってもらったのかなって。
考えたらすごく……悲しかったです」

消え入りそうな声で話しながら、さっきまでの悲壮感いっぱいだった自分を思い出す。

お弁当一つでこんなに自分の気持ちが落ち込むなんて、私は本当に瀬尾さんが好きなんだと改めて思い知る。

瀬尾さんは胸元にいる私の頭にキスをして。

「……いるよ、好きな人。
ここに。
……ヤバイ、ヤキモチ妬いてもらえるのがこんな嬉しいとは思わなかった」

その言葉に顔を上げると、少し照れたような瀬尾さんがそこにはいて。

その初めて見る表情に、また私の瀬尾さんを好きな気持ちが積み重なっていく。

瀬尾さんはユルユルと笑って、また優しいキスをした。

「……美羽、ごめん。
俺らずっとここにいるけど……飯食いに行く?」

「す、すみませんっ。
あの、部屋に……あ、でも私さっきまで寝てたからグチャグチャで……」

玄関先で告白をして、されて、キスをしていたことを思い出して恥ずかしくなる私に。

瀬尾さんがプッと笑って。

「うん、わかった。
俺も一旦部屋に帰って着替えるから、美羽、一緒においで。
何か食べられるなら今日はデリバリーを頼もう」

私の腰に両腕をまわしたまま、面白そうに言う瀬尾さんに、私は頷いた。


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