イジワル上司に甘く捕獲されました
「潤!」

「じ、瀬尾……さん」

峰岸さんと私が同時に声の主に振り向く。

何の感情もこもっていないような瞳で峰岸さんを冷たく見据えて、潤さんは私の隣に立つ。

「美羽に何か用?」

もう一度同じ質問をゆっくりと繰り返す潤さん。

「あ、あの、どうして……」

突然の潤さんの登場に驚いた私が尋ねると。

潤さんがポン、と私の頭に手を置いた。

「尚樹から聞いた」

「……男のクセにお喋りね、本当に。
潤……付き合ってる子ってその子なの?」

信じられない、といった表情を綺麗な顔に貼り付けて峰岸さんは潤さんを見る。

「……ああ。
美羽が俺の大事な彼女だ」

言い切る潤さんにグッと肩を抱かれる。

「……女の趣味が変わったのね。
私は……信じないし、諦めないわよ。
……どうせ本気じゃないんでしょ?」

峰岸さんは何かにすがるような声音で潤さんに尋ねる。

潤さんが疲れたように溜め息を吐いて峰岸さんに向かって言い放つ。

「……本気かどうかは峰岸には関係ない話だけど。
折角の機会だから話しておくよ。
俺は美羽と本気で付き合ってるし、美羽も同じ気持ちでいてくれていると信じてる。
……俺は美羽となら将来を歩めると思っているし、歩みたいと思っている」

その言葉に。

峰岸さんと同様、私も息を呑んだ。

ただ、峰岸さんとはかなりの温度差があった筈だけれど。


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