イジワル上司に甘く捕獲されました
私の頭をグイッと自分の胸に引き寄せる潤さん。

「……美羽は俺に恋を教えてくれたんだよ。
自分がこんなに人を好きになることができるなんて信じられないくらいに」

「……潤さん、私、私もね。
……あなたが大好きなの。
峰岸さんのことを教えてくれて……ありがとう。
潤さんにとっての大切な思い出だし、私が口を挟むべきではない話なのに。
……潤さんに、以前付き合っていた人がいたこと、好きな人がいたことは当たり前のことなのに……私、私、不安になってしまって……。
……心が狭いよね、峰岸さんの大切な気持ちだってあるのに」

自嘲気味に話す私に。

ゆっくりと首を横に振る潤さん。

「峰岸さんから見たら……割り込んだのは私で。
納得できないのも当たり前なんだけど……でも……二人が別れてるって聞いてホッとしている自分がいるの。
今日の歓迎会の時も潤さんが言い切ってくれたこと、嬉しかったの……峰岸さんの気持ちを考えたら……そんなことを言ったらいけないのだろうけど……潤さんが今、私の彼氏でいてくれることに安堵していて……潤さんを離したくないって思うの」

一気に言った私を驚くように見つめて、潤さんはとても優しい仕草で私の髪を撫でた。

……潤さんに髪を撫でてもらうことが好き。

大きな長い指で撫でてもらうと、とてもくすぐったくて安心して胸がキュウッとなる。

髪から温もりが伝わるみたいに、全身が守られているように感じて。

出会った時はただの綺麗な顔立ちの無愛想なご近所さんだと思っていた。

惹かれたりしない、そう思っていた。

……こんな何もかも完璧な人が私を好きになってくれるなんて思いもしなかった。

なのに。

……今はもう傍に潤さんがいてくれない毎日なんて考えられないくらいで。

この温もりをどんなことをしても守りたいと心から思う。

唇に落とされる優しいキスが切なくて。

何度も角度を変えて繰り返されるキスはどんどん熱を帯びてきて。

僅かに開いた唇から入ってきた温かな舌が私の歯列を優しくなぞって。

身体がジンと痺れていく。

「美羽……」

キスの合間に呼ばれる名前に、震える瞼を開けると熱を帯びた大好きな瞳が私を見つめる。

私はその熱に身を委ねた。






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