イジワル上司に甘く捕獲されました
「これって……!」

「そう、今朝の瀬尾くん。
……ボールペンもね?」

峰岸さんのスマートフォンには潤さんの姿があった。

久しぶりに見る潤さん。

盗み撮りなのか、横顔で。

何かを書きながら答えているみたいだ。

……私のボールペンで。

「それと、これもね」

画面を相変わらず完璧なネイルが施された指でスライドさせる峰岸さん。

そこには写真を撮られたことに気付いたのか正面を向いてムスッとした表情の潤さん。

それから何枚かスライドさせて峰岸さんは潤さんの写真を見せてくれた。

……その姿が嬉しくて懐かしくて。

潤さんへの気持ちが込み上げる。

そう、私、寂しかったんだ。

会いたかったんだ。

……不安だったんだ。

ちゃんと気持ちを肯定すれば良かったのに。

無理をして不安を溜め込まなければ良かったのに。

どうして素直に気持ちをぶつけなかったんだろう。

全く私は。

何度同じことを繰り返しているんだろう。

……本当に進歩がなくて、自分でも情けなくなる。

そんな風に思いながら顔を上げた私を見て。

「……あなたのメールアドレス、私に送ってくれる?
写真、送ってあげるわ」

満足そうに微笑んだ。

後ろで頷く桔梗さん。

その二人の様子を見て。

……やっとわかった。

どうして時間がない中で、二人がわざわざ会いに来てくれたのか。

……私を心配してくれていたんだ……。

潤さんの忙しさは私より二人の方が断然わかっている筈。

会えないこと、話せないことで私がどんな思いでいるかを……潤さんが心配してくれていることも。

そして。

……本当は誰よりも優しくて思いやり深い潤さんが。

私のことを理解してくれている潤さんが。

私の状態に気付かない訳がない。

二人に頼んでくれたのかもしれない……聞いても潤さんも桔梗さんも峰岸さんも教えてくれないだろうけれど。
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