イジワル上司に甘く捕獲されました
「……あの女、本当に苦手なんだよ」

佐野さんの姿が見えなくなった途端。

営業スマイルをかなぐり捨てて、嫌そうに言う瀬尾さん。

「あー、わかる。
潤のタイプではないな。
俺はギリギリかな……」

メニューに目を通しつつ、返事をする桔梗さん。

「いや、いつもあの会社に行くとあの女がやたらと誘ってくるんだよな。
あからさまでさ。
しかも香水が臭い」

眉間にシワを寄せる瀬尾さん。

「適当にあしらえば?
潤、営業スマイル得意だろ。
それより二人とも何にするか決めた?
俺、Aランチ。
……って美羽ちゃん?」

「……」

「橘?」

二人に怪訝な顔を向けられて私はハッとする。

「あっ、はい」

「……美羽ちゃん、もしかして気にしている?」

「は?
何を?」

キョトンとする瀬尾さん。

「い、いえっ、何もっ。
あっ、私、Bランチにしますっ」

「……潤、決まった?」

「俺、Aにする」

「潤、店員さん見つからないから探して注文してきて」

メニューを渡す桔梗さんに。

「お前が行けよ」

不服そうな瀬尾さん。

「俺、予約しただろ」

冷たくあしらわれて、不服そうに立ち上がる瀬尾さん。

瀬尾さんが少し離れた場所に行くと、桔梗さんが長い足を組みかえて、ニッコリと私に笑いかけた。








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