イジワル上司に甘く捕獲されました
その佐野さんの言葉に私はハッとした。

……色々な人から本当にモテるから、自宅は教えないと藤井さんが言っていたこと。

きっと、佐野さんも瀬尾さんに好意があるのだろう。

「いえ、違いますよ。
部下です」

ニッコリとそれはそれは魅力的な笑顔でキッパリと否定する瀬尾さん。

当たり前だけど。

わかっていたことだけれど。

それ以外の返答なんてないけれど。

その返答が何故か私の胸にチクリと刺さって。

こんなに騒がしい場所なのに、人もたくさんいるのに。

何だか一人ぼっちになってしまったような心許なさを感じる私がいて。

そんな自分に不安になってしまう。

「瀬尾。
先に入ってるぞ。
ああ……失礼。
お話し中でしたか?」

絶妙のタイミングでお店から現れる桔梗さん。

どうやら佐野さんは桔梗さんとは面識がないみたいで。

二人目の美形男性の登場にテンションが上がっていた。

「あら、同じお店の方ですかっ?」

「はい、ああ、失礼しました。
いつもお世話になっております。
桔梗と申します」

「まあ、本当に休日出勤されてらっしゃったんですね。
是非ランチをご一緒したかったです。
今度はよかったら是非ご一緒してくださいね。
瀬尾さんも桔梗さんも」

私の名前は然り気無く無視して、佐野さんは言う。

「ええ、是非。
すみません、中で他の者が待っておりますので失礼しますね」

これまた営業スマイル全開で瀬尾さんは佐野さんに暇を伝えて。

さっさと店内に入っていった。




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