イジワル上司に甘く捕獲されました
つまらなさそうに鼻にシワを寄せる桔梗さんが可笑しくてクスッと笑ってしまった。

そんな私を優しく見つめながら、桔梗さんは驚くことを口にした。

「俺は美羽ちゃん、全然ストライクゾーンなんだけど。
手を出すと潤が激怒りしそうだし。
……潤ってあんなに見てくれはいいのに、本当、自分が関心ある女子以外には興味ないんだよ。
よく言えば一途?
悪く言えば鈍感、無愛想、素っ気なし。
そんな潤が美羽ちゃんには、やたらかまって大事にしてるからさ、俺としては興味津々」

「……桔梗さん、楽しんでませんか……?
それに私……かまわれてるというより、怒られていたり睨まれていることの方が……」

「……わかってないねぇ、美羽ちゃん」

「……何の話だ?」

突然会話に参加する別の声。

「瀬尾さん!」

気まずくて視線を泳がせてしまう。

「あ、潤。
お帰り。
ちゃんと注文できた?」

悪びれた様子もなく満面の笑みでヒラヒラ手を振る桔梗さんをキッと睨んで瀬尾さんが席に着く。

「……尚樹。
お前、橘に何を話したんだよ?」

「ん~別に何も?
潤の話?」

「何で疑問形なんだよ!
橘、何の話だ?」

「……えっ」

急に振られて、先程桔梗さんに言われたことを思い出す。

……い、言えない……。

……言いにくい。

「な、内緒です……」

微かに赤くなった頬を隠すように小さな声で言うと。

「はあっ?」

意味がわからないとばかりに、一気に不機嫌な表情になる
瀬尾さん。

そんな瀬尾さんをみてニヤニヤしっぱなしの桔梗さん。

瀬尾さんにやたら睨まれる私。

……これの何処が大事にされてるんだか……。

三人の温度差が有りすぎて物凄く居心地の悪いランチタイム。

折角の美味しいトマトパスタもなかなか喉が通らなかった。







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