断罪アリス


「和真は私を守って死んだの……っ。それなのに、私は彼に何もしてあげられなかった」




涙ながらに言う彼女が小さく見えた。




いつもは人を弄って笑顔を浮かべて、礼儀はなってないけど自信に満ち溢れている。




それなのに、今は非力な子供のように弱く、寂しそうだった。




「だから、私は君を殺す……っ!切碕と一緒に!」




言葉には意思を感じられるのに、やっぱり彼女が握るハサミの先は震えていた。




優しいから出来ないんだな……。





なら──。




俺はアリスさんが握るハサミを掴むと強引に奪い取った。




アリスさんは奪われないように抗ったけど、女である彼女が男である俺の力に勝てるわけもない。




強引にハサミを奪い取ったことで、アリスさんはバランスを崩して俺の方へと倒れてくる。




急いで離れようとするアリスさんを俺は逃がさないように、両腕でその身体を抱き包んだ。






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