Spice‼︎
オープン前の店は真っ暗で
ヒロは電気も付けずに店で希を待った。

30分くらいして希が店にやって来た。

ヒロは希が来るまでに三本もタバコを吸っていて
希はその灰皿を見て

「吸いすぎじゃない?」

と言って
ヒロから取り上げたタバコを自分の口に咥えると
深く吸って煙がかからないよう横を向いて吐いた。

「好きな女ってホント?」

「うん。」

「どんな子?」

「胸がデカくて美人で…希よりスケベかな。」

希はヒロの手を握った。

「嘘。ヒロはその子を抱きたいだけでしょ?」

「最初はね。でも…今は違う。

一緒に暮らしてるし…メシも上手いし、頭もいい。」

それでも希は信じてない。

「そんな完璧な子がいる?」

「だけど…不倫してる男がいる。」

希は笑った。

「お互い不倫相手がいる恋人同士?」

「馬鹿だと思ってるだろ?」

ヒロがそう聞くと希はヒロにキスした。

「待ってて。主人とは別れるから。」

ヒロはそれを真に受けるほどもう純粋じゃなかった。

「希には飽きた。

好きな時ヤラセてくれないし、
自分勝手だし…嘘つきだから。」

「その子はヤラセてくれるから良いの?」

そんなことを言われてヒロは恥ずかしくなる。

核心を突かれたからだ。

「希と居ると疲れるよ。

人目気にしたり、時間合わせたり、やってる事クズだし。」

「ヒロだけが大変だと思わないで。」

希が悲しそうにそんな風に言うから
ヒロはまた別れる機会を失ってしまった。





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