Spice‼︎
その頃、梨花は懸命に仕事していた。

珍しく仕事時間にヒロから電話がかかってきた。

「どうしたの?何かあった?」

「梨花…俺…別れられなかった。」

梨花はヒロが彼女と別れようとしてるのを知って少し戸惑った。

「ヒロくん、彼女と別れるつもりなの?」

「もうキツくて…。」

梨花にもわからないではなかったけど…
梨花自身は桐原と別れるつもりなんてなかった。

「俺、梨花がいれば良いって思った。」

「うん…」

梨花は黙ってヒロの話を聞いてあげたいが
仕事の締め切りは差し迫ってる。

「藤城さん、データまとまった?」

スマホから梨花の世界の慌ただしい声が聞こえる。

「あ、はい。今持って行きます。」

「あ、ごめん。電話切ります。

また夜にでも。」

「ごめん。」

ヒロは希が吸った口紅の付いた吸い殻を見つめる。

「不倫なんてクソだな。」

そう言ってタバコに火をつけ昼間からバーボンを飲んだ。

梨花に逢いたくなって
夜が待ち遠しくなる。

しかしその夜、梨花の隣には桐原がいた。

梨花はヒロの寂しそうな顔が気になった。

「梨花…今夜ゆっくり出来るんだ。」

桐原にそう言われると気持ちは揺らいだ。

「ごめん。今日は体調悪い。」

だけど梨花はそう言って
桐原とホテルに行かなかった。

ヒロはその日、梨花が自分を選んでくれた事で
再び希と別れる決心をした。


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