Spice‼︎
それぞれの想い
プレゼンが成功して
社長は風間の事を見直したようだった。

桐原はまた成績を上げ、
風間の株を上げた事で部長になるのでは?…という噂が流れた。

風間自身もまた昇進する気配がしていた。

「良くやったな。
おかげでお前が七光りだけの男じゃないと証明出来た。」

風間は社長室に呼ばれ、
話を聞いているフリをしていたが
心の中では今日こそ上條美波との婚約破棄を頼もうとしてる。

「社長…仕事は頑張ります。

約束通り会社に入りましたから…

でも結婚は…」

社長はまるで聞いてない様に話しを遮る。

「あぁ、母親同士でそろそろ結納の日付を決めるそうだ。」

「母親?」

「もちろんお前の母親じゃない。

だが、結婚するには女親もいないとな。

まさか病気の籍も入ってないお前の母親ってワケにもいかないからな。」

「あなたの妻の手を借りてなど…
この結婚は絶対にしません!」

風間の母は父親の正妻に見下され、踏み躙られて辛い思いをしてきた。

家に怒鳴り込んできて
家の中をめちゃくちゃにされたこともある。

食卓をひっくり返されて
母が熱いスープを掛けられ火傷させられたのを見た事もある。

風間が子供の頃、正妻が乗り込んできては何度もそんな恐ろしい光景を見て来た。

もちろん愛人なんてそんな扱いを受けても仕方ないのだろうが…

風間は度を超えた嫌がらせを目の当たりにして
いつしか社長の正妻を嫌悪する様になった。

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