Spice‼︎
ヒロの好きな所はたくさんある。
だから一緒に暮らしていられる。

それは恋愛感情とは少しちがうけど
梨花が今、一緒に居て落ち着くのはヒロだ。

「好きなところはたくさんありますけど…
どこが好きとかなんて一言じゃ言えません。

でもただ一緒に居たいんです。」

希は梨花のその言葉にドキッとする。

自分も同じようにヒロを愛している。

どこが好きとかじゃなくてただずっと一緒に居たいといつも願っている。

でも自分には不可能な事だった。

梨花の正直な言葉は希の不倫にピリオドを打つ結果になった。

希はヒロを諦めたくなくてあれこれと質問してみたけれど
結局、梨花の登場で自分からヒロの心が離れてしまったんだと思った。

「ヒロ…彼女と仲良くね。元気で。」

希はそう言い残して店を出て行った。

今の自分に新しい恋を始めたヒロを引き止める資格は無かった。

ヒロはなんとも言えない悲しい顔をして
希を見送っていた。

「ヒロくん、これでいいの?」
後悔しない?」

ヒロは梨花を抱きしめて言った。

「所詮不倫だから…

それにもう希と付き合うのに疲れたんだ。

俺が後悔しないように…梨花が側に居て。」

梨花にはまだ風間も桐原もいるけど…
ヒロのことは大切だった。

キスしたり寝たりする友達なんて
友達とは言わないと思われるだろうけど…

梨花にとってヒロはホントに大切な友達になった。

身体を預けても良いくらい大切な友達…

だから傷ついたヒロを見ると切なくなった。

そして桐原と別れる自分を想像した。

「いつかは別れなきゃいけないんだもんね。

彼女も桐原部長も…家庭は捨てられないんだもん。」

梨花はヒロにキスをした。

「ヒロ…寂しかったらいつでも相手になるよ。」

梨花がそう言うとヒロは梨花の髪を撫でた。

「でも…今日から梨花の部屋にはもう1人男が居るけどね。」

「そうだった。」

「彼とはどうするの?」

梨花の顔が急に曇る。

「風間くんは私とは住む世界が違うの。」

ヒロはそんな梨花に優しく言った。

「同じ地球人で日本人じゃん。

それに今は俺と梨花と同じ部屋の住人だけど…?」

「そうだね。」

と梨花は笑った。

でも風間とはあの父親がいる限り
決して結ばれないと梨花は分かっていた。

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