Spice‼︎
野望に犠牲はつきものだ
桐原はイライラしている。

仕事は順調だが、順調すぎてつまらないし…
家庭は相変わらず針のむしろだった。

部長に昇進したことにより
義父である専務の風当たりはますます強くなった。

しかしその上に社長がいる。

社長は時々桐原を呼び出しては
会社にとって重要な人物と共に食事をしたり、
酒の席に呼ばれたりした。

桐原は人脈を広げ本当に頂点に立つ勢いだった。

それでも心はいつも渇いている。

決して手に入らない何かを欲してる。

それを埋めていたのが梨花との情事だった。

梨花が欲しいと願う気持ちは逢えなければ逢えないほど強くなった。

桐原は何度も梨花の部屋の前まで行ったが

「風間が戻って来たら別れる。」

と言った梨花が許せなかった。

暫く離れたら梨花はまたきっと自分の元に戻ってくると思っていたが
自分自身が離れていられなかった。

社長に認められ、
頂点に達するのはもう少しだ。

梨花を手にするためには
全てを捨てなくてはならない。

しかしここまで苦労してきたことを考えると
そんな事は到底出来なかった。

もともと梨花は風間を社長から引き離す道具にするつもりだった。

風間が好意を抱いてる事に気付き、
梨花と風間を出逢わせて夢中になるように仕向け
社長の座から引きずり下ろす目的だった。

しかし、自分も梨花から離れられなくなっていることに気付いていなかった。

桐原はそんな自分を後悔していた。
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