Spice‼︎
風間の部屋は相変わらず綺麗に整頓されていて
昔と同じ匂いがした。

「懐かしい。」

懐かしそうに辺りを見回す梨花を風間が抱きしめる。

「戻って来ませんか?」

梨花は返事をしなかった。

「まだ…桐原さんの事を忘れられないんですね?

もしそうなら…」

梨花はその言葉を遮るように風間に言った。

「風間くんは結婚しないの?

お父さんはなにも言わない?」

「父は今…揉めていてそれどころではありません。

梨花さんも知ってるでしょう?

商管4課で一緒だった…長谷川さん?

彼女との事で家族内で大変なようです。

父の正妻は気が強くてあの父でさえタジタジなんです。

でも…長谷川さんも負けてないみたいで…」

梨花は香織の事を思い出して少し笑ってしまった。

「長谷川さんがある意味羨ましい。

男を手玉にとって自分の道を切り開いていく事を堂々とやってのける人だから。

私には無理かなぁ。」

梨花は不倫というだけでやはり人の目を気にしてしまう。

人の家庭をこわしてしまう怖さもある。

自分の親が家庭を壊していく姿を目の当たりにしたから余計に怖かった。

「それが出来たら梨花さんはここには居ませんね。」

風間が梨花を抱きしめてくる。

桐原とのことはそれ以上何も聞かなかった。

そのかわり、風間が梨花を抱こうとして梨花の気持ちを測る。

梨花は風間を拒まずに受け入れて
風間はそれを素直に受け止めた。

梨花をもう桐原には会わせたくなかった。




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