Spice‼︎
寂しさは危険なスパイス
梨花は仕事が無いながらも
自分なりに仕事を見つけて無心で働く。

荒れていた倉庫は綺麗に整頓され、
乱雑に綴じてあったファイルはキチンと分かりやすくまとまった。

「藤城さん、ここで頑張っても誰も褒めてくれないですよ。」

同じ課の長谷川香織は去年、
同じ部の部長と不倫をして部長の妻に乗り込まれ
香織だけが異動になった。

「藤城さん何やっちゃったんです?
クビにならないってことはやっぱり私と同じ?」

香織はデスクで爪を磨きながら梨花に聞いた。

「似たようなモノよ。」

「えー、誰です?
相手の男はやっぱりお咎め無しですか?

ウチの会社って典型的な男尊女卑ですよね?

いつの時代なんだか。

ま、私も部長に散々貢がれて美味しい思いさせて貰いましたけどね。」

香織はあっけらかんと自分の過ちを他人事のように話して笑った。

「私も長谷川さんの時は本当に頭に来た。

女の子だけ異動で部長は平然と働いてるでしょ?」

長谷川香織の異動はちょっとした物議を呼んで、
梨花の記憶の中に鮮明に残っていた。

「でも部長も罰を受けたようなもんですよ。

あの件で奥さんに頭が上がらないらしいです。

ざまあみろですよねー。

私、藤城さんとは気が合いそう。

女は2人きりだから仲良くしましょうね。」

「そうだね。」

香織みたいな女の子は嫌いじゃなかった。

香織はお金があれば、梨花は快楽があれば、
それでよかった。

梨花は商管4課の環境に徐々に慣れていった。

そしてある日の午後、この倉庫みたいな部屋に梨花を訪ねてきた男がいた。

「藤城梨花…こんなところに居たとはなぁ。」

それは五年前まで梨花の彼氏だったあの土方だった。









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